May 26, 2011

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 千年以上の歴史を紡ぐ伝統はかろうじて守られた。国の重要無形民俗文化財で、福島県相馬地方に伝わる「相馬野馬追」の執行委員会が18日、今年の野馬追を7月23〜25日に開催することを決めた。ただ、東京電力福島第1原発の事故や震災被害により、主要行事を中止するなど規模が大幅に縮小されることになり、地域の受け止めは複雑だ。(是永桂一)

 相馬野馬追は、平安時代の武将、平将門の軍事演習に由来。甲冑(かっちゅう)姿の騎馬武者が神旗を争奪したり、馬を素手で捕まえるなど勇壮な祭りとして知られる。

 南相馬市、相馬市などの3神社と5地区の騎馬会から500騎前後の騎馬が参加し、昨年は3日間で20万人以上が訪れた。

 執行委員会では今年の野馬追を、大震災の被災者らへの鎮魂を願う行事として開催。各神社の神事は行う一方で、甲冑競馬、神旗争奪戦といった主要行事は、会場が「緊急時避難準備区域」に指定されていることや、津波で馬が死ぬなどして騎馬の参加が難しいことなどから中止とした。

 南相馬市の桜井勝延市長(執行委員長)は「野馬追は地域の生活の一部となっている。だが多くの馬や参加者が被災し、縮小を余儀なくされた。原発事故の収束を急ぎ、来年以降は環境が整うことを願っている」と複雑な胸の内を語った。

 震災以降、執行委員会には「中止」「開催」など100件以上の意見が寄せられていたという。

 伝統はかろうじて維持されることになったが、大幅な縮小となったことに、地元も複雑だ。

 5つの騎馬会の中で最大の「中ノ郷騎馬会」の中島三喜会長(63)は「原発事故で、若い人たちが地元に帰って来ないので担い手が足りない。悔しい。無念だ」。相馬太田神社の佐藤左内宮司(81)も「規模縮小は戦中・戦後の一時期を除いて初めて。神事は粛々と続けられるとはいえ、町に子供もなく、今後のことはわからない」と無念さをにじませた。

 南相馬市原町区の農業の男性(61)は今年息子2人とともに、3頭の騎馬で参加する予定だった。「騎馬が出ないのなら、今年は馬に乗ることもない」と肩を落とす。「来年馬に乗れたらいい」と話すが、その見通しも立たないのが現実だ。

 毎年この時期、練習のための馬が駆け回っていた雲雀(ひばり)ケ原祭場地(南相馬市)。今年は草花が伸びきったままだ。

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 東京電力は18日、福島第1原発にたまった高濃度の放射性物質(放射能)を含む汚染水浄化システムを、同日未明に停止したと発表した。1カ月に1回の交換を予定していた装置だが、17日夜の本格運転から約5時間で放射線量が交換の基準値に達した。原因は不明で、処理した水を再利用し原子炉冷却に使う「循環注水冷却」の開始も20日以降に遅れる見通しという。事故収束に向けた「生命線」の意味を持つ同システムだが、トラブル続きで汚染水流出の危険も迫っている。(原子力取材班)

 ■安堵から一転

 「大きな一歩。本当に良かった」

 17日夜に行われた新工程表の公表会見。システム本格稼働を東電から伝えられ、政府・東電統合対策室事務局長、細野豪志首相補佐官は安堵(あんど)の表情だった。

 だが、そのわずか数時間後にシステムは停止。東電は「トラブルではない」とはいうが、「想定外の事態」だったことは認める。

 原子炉建屋やタービン建屋の地下などにたまった汚染水の総量はすでに約11万トン。原子炉冷却のための注水はそのほとんどが漏れ出し、毎日約500トンずつ増え続ける汚染水の移送先は満杯寸前だ。梅雨で汚染水の増加ペースが加速する可能性もある。

 ■トラブル続出

 「循環注水冷却」の中核を構成する汚染水浄化システムは、米キュリオン社、仏アレバ社の装置などからなる。

 建屋にたまる汚染水をポンプで吸い出し、油分などの不純物を取り除いたうえで、ゼオライトという鉱物で放射性セシウムを除去。特殊な薬品で放射性物質を沈殿させた後、塩分を取り除いて淡水化する。

 試運転では、放射性物質の濃度を10万分の1まで下げることができたが、トラブルが相次いだ。

 10日には配管の接続部から漏水し、ポンプ制御のプログラムに設定ミスまで見つかった。本格運転を控えた16日夜にも再び装置内部の漏水が判明した。

 九州大の工藤和彦特任教授(原子力工学)は「汚染水処理は最優先だが、工程表に合わせて運転しようという意識があったのではないか。本格運転に入って思いがけないことが起こるのは困る」と指摘。技術評論家の桜井淳(きよし)氏も「2社の装置を組み合わせた実績はなく、今後もトラブルは頻繁にあるだろう」と厳しい見方を示す。

 ■復旧に時間も

 システムには約440基のタンクなどが配置され、配管の全長は約4キロに及ぶ。すでに高濃度汚染水を流しており、不具合が見つかっても復旧に時間がかかることが予想される。東電も「状況によっては、システムに淡水を入れて放射能を洗い流さないと修理できない」と認める。

 また、汚染水には海水も混じっており、高濃度の塩分が配管などを腐食させたり、正常な動作を妨げる懸念もある。汚染水浄化に伴って発生すると見込まれる約2千立方メートルの高濃度放射能を含む汚泥の処理方法も決まっておらず、課題は山積だ。桜井氏は「大きな余震に耐えられるか心配。配管破断などが起きれば、施設内に大量の汚染水が出る」と指摘。「工程表を実現する生命線」(東電)は、つねに“切断”の危機を内包している状況だ。

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